ワインとのペアリングが醍醐味。ハイエンドなミシュラン星のインド料理レストラン&ラウンジ

ニューヨークにはクイーンズ地区のジャクソンハイツ、イーストビレッジなどインド料理店が立ち並ぶエリアがいくつか存在する。ニューヨーカーにとってイン ド料理は安くてお手軽な食事として定着している。そんなインド料理のイメージを一掃する洗練された料理と空間を提供するのが、2012年のミシュランガイ ドで星を獲得した「Junoon」。最近では観光スポットにもなり始めている高級イタリアン食品店「Eataly」の賑わいから少し外れた23丁目にこの 店はひっそりと立つ。

外観の物静かさとは一変して、建物に一足踏み入れると別空間が広がる。伝統的なインドらしい装飾をちりばめながらも木と白い壁で統一されたモダンな空間。 入り口付近のコートチェックをまっすぐ抜けると回廊を思わせる通路が続き、右手には55席あるプライベートダイニングエリア、そして左手に95席のテーブ ル席とブースが並ぶ。

この店の醍醐味は3つある。まずはコンセプトをしっかりと組み立てたメニュー。インド料理というものを「カレーとタンドリー」のようにざっくりとしたイ メージでしか認識していない方も多いだろう。Junoonでは、インド料理のバラエティーの豊かさを基本となる5つの調理法、「Handi (インド式寸胴鍋)」、「Sigri (直火)」、「Pathar (石)」、「Tawa (鉄板)」、そして「Tandoor (土釜)」を用いて体験させてくれる。

2つ目の魅力はスパイスの調合。地下にある「スパイスルーム」と呼ばれる香辛料の貯蔵ルームには、随時、数えきれない程の良質なスパイスが保管されてい る。この店ではスパイスの調合には細心の注意を払い、バランスの取れた味を提供する事に務めている。また、オリジナルのスパイスの調合もこの部屋で行わ れ、他では体験できないフレーバーを開発しているのだ。

そしてもう一つの醍醐味には、ワインとのペアリングがある。レストランには常に3名のソムリエが待機。食事に合わせてワインを選ぶサポートを行っている。 「インド料理にワイン?」と思う方もいるかもしれない。だがJunoonの料理は本格的なインド料理に少しのモダンさを加え、エレガントかつ繊細な味を楽 しめる。そういった料理にはワインがしっかりと合うのだ。「インド料理と合わせることで他の料理とのペアリングでは登場しないプロフィールを持ったワイン も楽しむこともできるんだ」と語るのはビバレッジ・ディレクターのスコット・カーネイ氏。「スウィートなものやスパークリングなものでインド料理のスパイ シーさとバランスをとる、というのはその良い一例だね」ソムリエ協会「コート・オブ・マスターソムリエ」にてマスターソムリエの資格を持つカーネイ氏の言 葉だけに説得力が感じられる。同氏がJunoonでセレクトするのは250種類にも及ぶワイン達。クラッシックなものから南米、アフリカのワインまで取り 揃える。インド産ワインもこの店だから経験してみるのも良いだろう。

気になる料理だが、是非試したいのが2種類のコースメニュー。3種類の調理法の料理が楽しめる「3 Element Course」、そして5種類が楽しめる「5 Element Course」があり、リクエストで各料理にワインが付いてくるペアリングコースにすることができる。(レギュラーペアリング: $45が加算/プレミアムペアリング: $75が加算)この店のコンセプトを網羅して楽しむのであればこちらがお勧めである。

この店の料理長を務めるのはVikas Khanna氏。インドの人気料理番組「Master Chef India」にて司会、審査員を務め、料理本を何冊も出版するカリスマシェフ。どの料理も一般的なインド料理とは一線を画し、洗練された盛りつけで心をと きめかせてくれる。メニューはシーズンごとに変え、常に季節を意識した素材を用いる。また伝統的なインド料理に加えてモダンにアレンジされたメニューも並 び、インド料理として新しい体験ができるのも魅力だ。大胆にスパイスを効かせ「インド料理です」と主張する料理だけでなく、ささやくようにさりげなくスパ イスを加えた繊細な料理をバランスよく揃えている。例えば、トランペットロイヤル、シャントレル、椎茸のアペタイザー「Ajwaini Mushroom」は見た目からはインド料理とは思わせない一品。キノコの下に敷かれたキャラメライズドオニオンはしっかりペッパーが効き、味にメリハリ をつけている。そこにほんのりと感じるアジョワンの風味で、ようやくインド料理と気づかせてくれる。細やかなスパイスの使い方には脱帽だ。

また、最近では併設のラウンジを「Patiala」としてリニューアル。レストランと統一したインテリアと広々した空間の中、くつろいでカクテルを楽しめ る。驚きなのがスパイスルームに貯蔵してある良質のインドのスパイスを用いたユニークなカクテルの数々。例えば「スパークリング・サフラン」はサフランの アロマを楽しみながら頂くシャンパンのカクテル、そして「スパイス・トレイル」はガラムマサラでひねりを効かせた人気のマティーニだ。他にも「タンド リー・テキーラ」と呼ばれるタンドリーで調理したパイナップルとカレーリーフを用いた刺激的なカクテルも。

おそらくJunoonの魅力を満喫するのには一度の来店では足りないだろう。それはバラエティー豊かなメニューをアラカルテで色々試したり、ワインをメイ ンに楽しむために訪れたりと様々な楽しみ方ができるからだ。一言でまとめるのであれば、インド料理とワインの新しい出会い、そして、インドのスパイスの懐 の深さを知るにはこの店がお勧めである。


Junoon / Patiala

27 West 24th St, New York NY 10010

Phone: 212-490-2100
www.junoonnyc.com