LES頂く心温まる本格蕎麦「cocoron」

近年ニューヨークはラーメンブーム。専門店が多く増えるなかで、ラーメン同様ニューヨーカーに厚い支持を得ている日本を代表する麺、蕎麦の専門店「cocoron」が12月1日にローワーイーストサイドにオープンした。お店の名前は、「心」と「温」を組み合わせた造語で、心温まる本格蕎麦を食べてもらいたいという気持ちが込められている。

店に入ると2人用のテーブルが3つと、8席のカウンター席。カウンターの向こうには、オープンキッチンが広がり、こだわりの蕎麦がゆであがるのを目の当たりにできる。14席とこじんまりしたレストランには理由がある。出来立ての蕎麦をすぐにお客様に食べて頂くためにはこのサイズが限界。席数が増えればお客様を待たせてしまうからだとか。

こだわりの詰まったお店でこだわりの蕎麦を打つのは、オーナーの喜田義人さん。10 年間東京で蕎麦職人として修行を積んできた。その経験を生かし、ミッドタウンの蕎麦屋の立ち上げにも携わった。そしてこの度、ヘルシーでおいしい蕎麦をもっと世界に広めたいという想いから念願の店をオープンした。

自慢の蕎麦は毎日準手打ち。使用するアメリカ産の蕎麦粉は、製粉技術の違いから日本で使っていたものとは異なる。また、その日の気温や湿度によっても蕎麦の出来具合は変わってくる。そういった食材、環境の違いから微妙な調整が必要になるが、蕎麦を知り尽くしている喜田さんは柔軟に対応し、丹誠込めて毎日蕎麦作りに励んでいる。

又、蕎麦と一言でいっても、冷たい蕎麦か、温かい蕎麦かによって食べ方も異なり、すぐに食べないとのびてしまう。一番美味しく蕎麦を食べてもらうように、アメリカ人のお客様のために蕎麦の食べ方のインストラクションシートが用意されており、美味しく食べる方法も一緒に伝えている。

メニューは蕎麦を中心に小鉢、サラダ、デザートというシンプルなメニュー構成。ニューヨークでは蕎麦の値段は日本に比べて割高。しかし、「本来、蕎麦は気軽に何度も食べられる価格設定であるべき」というポリシーから、値段もリーズナブルに設定されている。

オーソドックスなスタイルの蕎麦に加え、ユニークなオリジナルの蕎麦メニューを考案。オーセンティックな味は保ちながら、蕎麦の新しいスタイルも追求しているのだ。「蕎麦を世界に広げたい」というミッションが明確だからこそ、伝統にとらわれないアイデアも展開している。

つけ麺スタイルの蕎麦「スタミナ蕎麦」は一押しのメニュー。蕎麦とは別に小さい鍋が火に掛けられた状態で出され、そこには、鶏がらベースのスープ、豚肉ロースの薄切り、豚肉のミンチ、とり団子、ごぼう、しいたけが加えられたつけ汁が注がれている。普通のつけ麺では、だんだんスープが冷めてしまうので、火にかけておく事で、最後まで温かい状態を保つという工夫がこなされている。蕎麦といえばあっさりとしたイメージがあるが、この一品はしっかり食べ応えがある。

本格的な蕎麦を提供するだけでなく、蕎麦を美味しく食べてもらう食文化の伝承も怠らないこの店の出現で、ニューヨーカーが1人でズズっと蕎麦をすすり、さっとお勘定をして出て行く…そんな粋なソバスタイルが定着する日もそう遠くはないだろう。

 


Cocoron

61 Delancey St
Manhattan, NY 10002
Phone: 212-925-5220