マンハッタンのど真ん中にオープンした、ニューヨークらしさ溢れる日本食レストラン「Mr.ROBATA / ミスターロバタ」

ニューヨークの人気深夜テレビ番組、「デイビッド・レターマン」のスタジオを少し南に下ったブロードウエイの52丁目。ピザ屋、土産物屋が立ち並び、イエロー・キャブがひっきりなしに通り過ぎるこの賑やかな界隈に 「Mr.ROBATA」 が登場した。

オーナーのバリー氏は、マンハッタンで不動産を手がける実業家。息子のバリー・ジュニア氏とブレント氏と共にレストランをオープンすることとなった。シンプルな食材をグリルするというヘルシーな「ろばた焼」をメニューに取り入れた日本食レストランをと考えていたが、バリー氏にとってレストラン経営は初めて。また日本食レストランはまったくの未知の世界のことだ。そこで、このプロジェクトを実現するための強力な「助っ人外国人」として抜擢されたのが、ニューヨークで25年間、日本食を作り続けている中山シェフだ。

今から24年前、ジャズのメッカニューヨークで音楽のキャリアを積む夢を持ち渡米した中山シェフ。その後、音楽界から料理界へと転身。「音楽がきっかけでニューヨークに来たが、それは天職の『食の道』へ足を踏み入れるきっかけに過ぎなかった」と語る中山シェフ。関西割烹、懐石、お寿司と経験を積み、その後、日本食とフレンチのフュージョンレストランのプロジェクトに携わった。そこでは、三ツ星フレンチシェフとコラボレーションをしながら、フランス料理を学ぶ機会も得た。

中山シェフの創り出す料理には、日本料理に独自のアレンジが加えられているものが多い。そこには、ニューヨークでいろいろな食材、食文化に囲まれて日本食を提供し続けてきた今迄の実績が現れている。アメリカ人のお客様にとって馴染みの薄い日本料理でも、親しみのあるアメリカの食材を使う等の工夫によって親近感が湧き易くなる。

そして、しっかりと日本料理の基礎を理解した上で造られた一品一品は、アメリカの食材との組み合わせや味のバランスも保たれており、オーセンティックな味を舌で覚えている日本人でもシェフの和の創作力が理解できる。

「TAPAS」と紹介されている、アペタイザーでの注目は、「Mallard Duck Breast and Foie Gras」。ニューヨーク産の鴨肉とフォアグラ、煮りんごをスライスしたものを、ストロベリーソースでいただく。お肉のジューシーさ、フォアグラの芳醇な味わい、お口直し的な役割を果たすりんご。そこにストロベリーが加わると、驚くべき味のコンビネーション。

「Wagyu Sliders」も見逃せない一品。ミディアムレアに焼かれたジューシーな和牛が、マッシュルームとワカモレのソースと一緒にブリオッシュに挟まれたいわゆるミニバーガー。小さいサイズなのに、1つ食べただけでも素晴らしい満足感が生まれる。

ロバタメニューに並ぶオーガニックの野菜はシンプルにグリルされ、野菜の旨味を感じられる。他にも、地物の鴨肉があるかと思えば、和牛のフィレミニオンもメニューに並ぶ。丁度いい火加減で調理されたそれぞれの焼き物は、何もつけなくても美味しいのだが、中山シェフのオリジナルソースで頂くとこれまた味の新しい発見がある。ポン酢やゆず味噌といった和の定番があるかと思えば、山葵クリームチーズのディッピングソースといった変わりネタも。こちらのソースで頂くつくねは最高だ。

「アメリカ人または日本人のお客様、日本食になじみのある方またはそうでないお客様、そしてベジタリアンのお客様でもお食事を楽しんでもらえる。それが、この店なんです」と語るバリー氏。ミニバーガーを頬張る人の横でお寿司を口にするお客様がいる。そんな光景にニューヨークらしさを感じずにはいられない。

中山シェフの料理を引き立てるドリンクメニューも充実。特に注目したいのが、ワインのスペシャリスト、池上サラさんが選ぶ、食事に最高にあったワイン。料理一品一品の特徴を理解した彼女が選ぶお勧めのワインを食事と一緒に頂くと、「ペアリング」とはまさにこのことを言うのだと実感させられる。

深夜午前3時まで営業。ブロードウェイ後の遅めの夕食、仕事帰りのレストランのシェフなども多く立ち寄る。

プレゼンテーション、味、創造力、和と洋のバランスとどれをとっても抜かりない。中山シェフの作り出す料理は「わくわく」させられる一品ばかりだ。これは、ニューヨークの食業界での長年のキャリアを持つ彼だからこそできる、まさに「中山マジック」といっても過言ではないだろう。


Mr. Robata

1674 Broadway at 52nd Street, NY
212-757-1030

http://www.mrrobata.com/#