オーナーの丁寧な気遣いが行き届いたアットホームなレストラン「Eighty Four on Seventh」

こじんまりとした店内に入ると、そこはまるでヨーロッパにある小さなレストラン。ゆったりとしたジャズが流れ、白い壁と木調の家具、メニューの書かれた黒板が可愛らしい。どこかほっとさせる雰囲気が大都会ニューヨークの喧噪を忘れさせてくれる。

入った瞬間から落ち着ける安心感を感じられるのは、オーナー、ナタリー・マロウフィさんの細かな気遣いが店内全体にきっちりと行き届いているから。お客様との対話を大事にするため、ニューヨークのレストランでよく見るお皿を片付けるだけのバスボーイは雇わず、教育されたウェイターが親切でフレンドリーに接客してくれる。全てのテーブルに一輪ずつ生花が飾ってあるのも彼女の小さな気遣い。キッチンの様子も見えるようになっていて、オーナー自慢のシェフ、アーロン・フィッターマンさんの料理風景を覗ける。

ナタリーさんが「アーロンは味のコンビネーションにとても才能があるの」と豪語するように、ここの料理は様々な味が驚くほど上手い具合にマッチしている。カボチャの花のゴートチーズ詰めサラダはゴートチーズの濃い味を周りの野菜がリフレッシュさせてくれる。前菜のホタテを使った一品は、ホタテの甘さとチコリーの苦さにグレープフルーツの爽やかさが絶妙だ。メインのスパイスされたポークとアプリコットの付け合わせも、甘いアプリコットと塩辛いベーコンがポークの味を引き立てる。1つ1つ味の異なる食材だが、一緒に食べるととてもバランスがよく、お互いの味がうまく引き出されている。

ドリンクメニューも料理にあった厳選されたワインが用意されている。白ワインがグラスで5種類、ボトルで10種類、赤ワインはグラス4種類、ボトル11種類、グラスのみローズワイン、スパークリングワインがグラスで3種類、ボトルで5種類が揃っている。また、10種類ほどのカクテルはバーテンダーのサムさんがオーソドックスなレシピをモダンにアレンジして考案した。どれも可愛らしいネーミングで、彼曰く全てのカクテルにそれぞれのストーリーがあるのだそう。

例えば「Mommy Dearest Mimosa」というアーモンドの風味を持つリキュールを使ったカクテルは、映画「Mommy Dearest(邦題は愛と憎しみの伝説)」の中に出てくるクレイジーでナッツ(馬鹿)なお母さんにインスピレーションを受けて名付けられたそう。カクテルにはひそかな遊び心がある。

ニューコンテンポラリーアメリカン/イタリアン料理と聞くと、よく分からなくて挑戦しにくいのだが、親切な接客、味、雰囲気の良さは「一度来てもらえば、必ず帰ってきたい場所になる自信がある」とナタリーさんは言う。全てがハイスピードなニューヨークの中で、気を許してリラックス出来る場所「Eighty Four on Seventh」はいつでもあなたをあたたかく迎え入れてくれる。

Text By Haruka Suzuki

 


Eighty Four on Seventh

84 Seventh Avenue S, (Bleecker & Grove St.)
New York, 10014
Phone: 212-255-7150