産業革命をモチーフにしたガストロパブ誕生「Boulton & Watt」


マシュー・ボールトン、そしてジェームス・ワット。彼らをご存知だろうか?18世紀から19世紀にかけて起こった産業革命に貢献した偉人達だ。この度、この二人の名前を掲げたガストロパブ「Boulton & Watt」がローワーイーストサイドに誕生した。実際のオープンは2012年の秋にはオープンを考えていたが、ハリケーン「サンディー」の影響で予定が大幅にずれ、今年1月2日にオフィシャルオープンを迎えることになった。

店内は18席ほどのコミューナルテーブルを中心にして、右手にバーカウンター、左手にはテーブル席というレイアウト。ボールトンとワットが開発した蒸気機関をコンセプトにし、当時の雰囲気を伝える内装に仕上げられた店内。レンガとコンクリートで作られた壁は、ラギッドな雰囲気を作り出している。また、天井で廻るファンには機関車をも思わせる工業的なベルトが動いていたり、雰囲気を崩さないようにと店内に8つあるテレビは全てスライド式の隠し戸の裏に格納されていたりなど、ユニークな仕掛けが所々にちりばめられている。

ガストロパブでまず気になるのはドリンクだろう。Boulton & Wattでは10種類のドラフトビールを14oz、32oz、64ozの3サイズで、ワインも赤、白ともに8種類ずつ、グラス、カラフェ、ボトルの3サイズで楽しめる。人とシェアしたり、一人で楽しんだりとシチュエーションによってサイズを選べる使い勝手が嬉しい。また、バーも併設のため、各種ハードリカーも勿論楽しめる。カクテルを試したい方には、是非オリジナルカクテルを試して頂きたい。ハラペーニョのピリっとした辛さとシトラスの爽快感が特徴の「Mexican Revolver」、そしてジンジャービールとブランデーを使った「Lady Ashley」の2つがお薦めだ。

食事は産業革命の時代背景に合わせ、アイリッシュ、ブリティッシュ、アメリカンの居酒屋メニューを組み合わせた内容。どれもビールやワインに合うメニューになるようにと考慮されている。まずメニューで注目したいのが、自家製ピクルス。バラエティー豊かな素材のピクルスが8種類メニューに並ぶ。ピクルスはそれぞれ素材に合わせて、クミン、ペッパーなどバラエティー豊かな漬け汁で漬け込まれており、それぞれがはっきりと違う個性を持った一品に仕上げられている。中でもユニークなのがパイナップルのピクルス。パイナップルのトロピカルな甘さとピクルスの酸っぱさの意外な出会いに病付きになる客もいるらしい。スタンダードなキュウリや人参のピクルスもユニークな漬け汁を使う事で、主張ある一品へと生まれ変わる。これは食前のビールのツマミや箸休めに最高だ。

タルタルステーキ、ボーンマロウ、生ガキなど数々の魅力的なメニューの中、一番人気のアペタイザーは「Scotch Egg」。イギリスの定番料理でミンチカツの中に半熟のゆで卵が入ったような一品。この店ではベアルネーズソースをつけて頂く。トロッとした黄身とサクサクなカツ、そしてソースとの酸味とが旨く調和した一品である。また、ブリキの容器に入れられて登場するマッシュルームの一品「Crispy Wiled Mushroom Dexelle」もお薦めの料理。かりっと揚げられたマッシュルームのフライをペストソースにつけて頂く。「Boulton and Watt Mac and Cheese」は典型的なアメリカのバーフードではあるが、この店のものは比較的あっさりと仕上げられているため、「こってりとした感じが苦手で普段はあまり食べない」という方にも食べやすいだろう。表面にまぶされたパン粉の食感とベーコンの風味は、もちっとしたマカロニとチーズの味との良いアクセントになっている。

食事の合間にあっさりとした一品が食べたくなったら「Organic Quinoa Salad with Warm Wild Mushroom」がお薦めだ。 今ニューヨークで流行りのケール、そしてマッシュルーム、ザクロをキヌアにマリネした一品。ザクロの酸っぱさと食感が小気味よい一品。思ったよりもボリュームが大きいので、他の料理もオーダーするのであればシェアするのがお薦めである。

メインディッシュで試して頂きたいのが「Blackened Brick Chicken」だ。シンプルなだけに調理の具合と素材が重要なグリルしたチキン料理。ニューヨークのバーなどでジューシーさの抜けたものを出されて気落ちした方もいるだろうが、ご安心を。この店の一品は鶏肉の旨味とジューシーさがきちんと感じられる仕上がりとなっている。

「ガストロパブ(食事にこだわりを持った洋風居酒屋)」というカテゴリーの店が増えている中、その本質をしっかり押さえている店は多くない。Boulton & Wattは、ボリュームや質にこだわりを持ち、「お客様が楽しめる」という事をしっかり考えた店だ。オーナーのDarin Rubell氏は飲食店のバイトからここまでのし上がった実力派。お客様の求める食事をしっかり抑え、自分の世界観の中でそれを旨く表現している。食事とビールを楽しみたい、と思ったら是非訪れたい店の一つだ。


Boulton & Watt

5 Avenue A, New York, NY 10009
Phone: 646-490-6004
http://boultonandwattnyc.com